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2008年2月 5日(火)
十四話 カレイ釣りの本場・仙台湾の伝統釣法 カレイ
「うわぁっ! 派手っ! こっちではこんな仕掛け使うんだぁ…」
もう数年以上前の話になるが、仙台湾のマガレイ釣りを取材に行った。
そのとき、情報収集にと入った地元の釣具店でまずはびっくりした。オモリはショッキングピンク色、天秤もショッキングピンク色のパイプ、この店のオリジナル仕掛けというのも、ハリやハリスに夜光玉やらキラキラ光るモールのようなもので派手なデコレーションが施されていた。
こちらの釣りは、水深50mぐらいの場所で狙い、とにかくオモリで海底を小突き、仕掛けを目立たせることでエサをアピールしてカレイに喰わせる。しかもアタリは、「もたれ」というカレイ独特のエサをくわえた状態をサオ先で察知し、そこから喰わせて掛けるという高度なテクニックと経験を必要とする釣りなのだ。メーカーもこのカレイ釣りには、専用のサオを製造販売するほどの力の入れようだ。
その日の朝、船に乗ってみると、平日だというのに釣客で一杯。ご当地でいかに人気の高い釣りであるかがうかがわれる。
釣り場に着くと、船首側に座ったこの釣りのベテランらしき中年の方が釣り始めた。細かく海底を小突き、サオ先に全神経を集中させてアタリをきく。なんか関東のカワハギ釣りのタタキ釣りに似た釣り方だった。
ボクも貸し道具で挑戦してみた。エサを喰うアタリはわかったものの、いわゆる「もたれ」までは感知できずにいた。結果的には地元のベテラン釣師の四分の一ほどの釣果だった。
なんか悔しくてこのままでは帰れない。ボクのクルマの中には3.3mの30号マダイ竿と電動リールが積んであった。翌日もこのカレイ釣り船に乗ったのだが、このマダイ竿と電動リール、そしてコマセマダイ用の大きな天秤にハリが5本ついた仕掛けを作って、地元のベテラン釣師を驚かしてやろうともくろんだのだ。
仕掛けを沈め、一度底を切って仕掛けをまっすぐにして着底。あとはロッドホルダーにかけて置き竿。アタリがあってもほうっておいて、しばらくして電動で巻き上げる。
思惑通り、5本のハリにほぼ毎回5枚のカレイがついて上がってきた。地元のベテラン釣師と釣り船の船長が目を丸くして見ていた。そりやぁそうである。片や全神経集中させて1枚1枚釣り上げ、こちらは底延縄漁業のように5枚ずつまとめてゲットする。釣果は間違いなく漁業釣法に分があった。
最初のうちは、ボクも「やったね」という満足した気持ちで一杯だったのだが、そのうちになんか妙に惨めな気分になってきてこの釣り方を止めた。何十年も築きあげてきた伝統に泥を塗っている気がしてきたからだった。
釣りは釣果が最優先ではない。語り継がれ、受け継がれてきた釣法。この仙台のカレイ釣りだって立派な文化である。釣りはその人が1尾のサカナを釣り上げるために、海やサカナと対話する。その対話をなくして、釣果最優先に走ること、これは釣りではなく、単なるサカナの殺戮や自然への冒涜でしかない。
仙台の澄んだ青空の下。揺れる船上でなぜかこんな釣りの哲学に思いふけっていたのだった。
(次回へつづく)
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