現在位置: つり通信 > 豊田直之フォトエッセイ > 2008年1月
2008年1月29日(火)
十三話 海底でじっとしている オニカサゴ
「ええっ!こんな浅いところにオニカサゴ(イズカサゴ)がいるの? だって釣りしたときは水深150mの沖合いだったのに…」
このオニカサゴを見つけたのは、伊豆大島を潜っていたときのことだった。島の北東部にある秋の浜。その浜に突き出している防波堤から海に入った。青く澄んだ視界が心地よく、急深の海はあっという間に水深30mに到達した。
細かい砂利と砂とが入り混じった底質の広い海底。そこにはちょうどたらいをひっくり返したぐらいの大きさの岩が点在していた。現地のダイビングガイドが大きくて招きをした。何かと思い、やや急いで水中を移動する。ガイドが指差す先には、岩の縁に隠れるようにしていたイズカサゴ(オニカサゴ)がいた。ガイドは水中ノートに、「このサカナはいつもはもっと深いところにいるサカナで、こんな浅い水深で見られるのはとても珍しいです」と書いて見せてくれた。
なぜこんな浅いところにいるのだろう? こういった普段とは違う行動は、たいてい彼らにとってなんらかの意味を持つもの。その場合、産卵や交接といった理由が多いものである。だがこのとき見たのは1尾だけであり、もしそういった行動であれば何尾も見られるはずなのだが…。このサカナの生態は不明なことも多く、ライフスタイルが完全に解き明かされるまでにはまだまだ時間を必要としそうだ。
さて、そんなことはともあれ、イズカサゴがふだんどうしているのかをまのあたりにできたことは大きな意味がある。やはりじっとしていて、なにかエサとなるものが目の前に現れたとたん、おそらく大きな口でガバッと喰うのだろう。今回見つけたような岩の脇に潜むことで、ほかの大型魚たとえばハタのようなサカナには見つかりにくい。仮に見つかったとしても、背後にある岩が捕食の妨げとなって喰われにくくなるだろうし、いざとなれば、猛毒のある背ビレを立てれば、ほぼ完璧な防御となるはずである。
こういった姿を思い浮かべながら釣りをすれば、オニカサゴを釣るためにはどうしなければならないかが見えてくるだろう。ボクが思うには、とにかく頻繁に底ダチをとり直してエサが海底スレスレにあるようにタナをとる、サオでゆっくりと誘うことでエサの存在をアピールする、そういったことが重要な要素になるはずである。
(次回からはカレイの予定です)
2008年1月29日(火) 豊田直之フォトエッセイ|固定リンク
2008年1月22日(火)
十二話 猛毒のヒレとヒレ酒? オニカサゴ
オニカサゴはとにかく美味い。まず一般鮮魚店などには流通しないから、このサカナを味わおうと思ったら、自分で食材を調達せねばならない。刺身OK、から揚げOK、なべOK。サカナの見かけとは裏腹に、とにかく上品で深みのある美味さなのだ。
オニカサゴが美味いとうなる人は、酒呑みが多いかもしれない。そんな人にうってつけなのがこのサカナの「ヒレ酒」である。「ええっ!?毒のあるヒレの酒?」
大丈夫。毒のないヒレを使う。伊豆の漁師さんに教えていただいたのだが、だまされたと思って一度試してみて欲しい。
ヒレといっても、猛毒のある背ビレではない。必要なのは胸ビレと尾ビレ。これらのヒレを調理するときに根元からスパッと切っておく。このとき、身がごそっとついてこないような部分で切ったほうがいいようだ。かといってあまりにもヒレだけをちぎったような切り方では味が出にくいのだが…。少しだけ身がついている感じが望ましい。
切ったヒレは、まず一回よく真水で洗い、指で擦り取るようにして「ぬめり」とかがついていないようにする。そしてそのヒレをなるべく広げ、立てかけた「まな板」でも、窓ガラスでもいいので、平らな板にはりつけて乾かす。ヒレの表面の水分が飛び、半乾きになったころがベスト。コンロに金網を乗せ、弱火で軽くあぶる。香ばしい香りがしてきたら、人肌よりやや熱めの日本酒熱燗に入れる。いきなり濁ってはくるが、これまたフグのヒレ酒よりも旨いと思えるのだ。すぐに呑まないなら、半乾きの状態で、これを小さなタイプのジップロックに入れて冷凍しておけば、呑みたいときに使える。
あとちなみに毒のある背ビレの扱いだが、猛毒はこのサカナが死んでも威力は衰えない。刺されてとんでもない思いをするよりは、現場で毒ビレを切り落としておくべき。このオニカサゴの1回目にも書いたが、ガンガゼバサミを用意し、サカナはバリバサミではさんで持つか、口に親指を入れて、下あごを持つようにするといい。顔を近づけて切ると、毒液が飛んで目に入ったりする危険性があるので、船べりから手を伸ばし、風上側に自分が位置するようにして切る。まず背ビレの太い棘のヒレ、そして尻ビレの太い棘の部分。ここだけきちんと根元付近から落としておけば、刺されることはない。心配なら、腹ビレの棘の部分も落としておいてもいいだろう。
(次回へつづく)
2008年1月22日(火) 豊田直之フォトエッセイ|固定リンク
2008年1月15日(火)
十一話 耐水圧抵抗力のナゾ? オニカサゴ
船釣りで、やや深めの場所から釣り上げると、サカナは浮き袋や目玉が膨張して飛び出してしまうもの。
そりやぁそうである。水圧というのは、水深10mごとに1気圧ずつ増加する。だから、例えば水深100mのところというと、このボクたちが暮らしている大気圧の1気圧を加えた11気圧というとてつもない圧力の世界である。
とてつもないといってもわかりにくいだろが、たかだか水深20mで硬式テニスボールが水圧でぺしゃんこになる。あのボールを握りつぶそうとしてもつぶせる人はよほどの人でなければ無理。この水深で水圧は3気圧である。3気圧ですらそんな圧力の世界なのだ。11気圧というと、その約4倍。少しはとてつもなさがわかっていただけただろうか。
サカナにしてみれば、11気圧の圧力で暮らしていたものが、いきなりリールで1気圧の世界につれてこられるのだから、ひとたまりもないはずである。理屈からすれば、圧力が11分の1になったということは、体積は11倍に膨張する。だから浮き袋のような器官に入っている空気(気体として何が入っているかは不明)は11倍に膨らむ。メバルやカサゴがぽんぽこぽんに膨らんでしまうのは当然のことなのである。
前振りが長くなってしまって恐縮なのだが、今回のテーマ魚のオニカサゴはなぜか膨らまない。オニカサゴの釣れる水深は、さらに深い120mとか180mとかである。圧力変化はさらに過酷なもののはずなのに。ここから電動リールで強引に引き上げられても、目は飛び出さないし、浮き袋や内臓もまったく飛び出さない。仮に水面でハリが外れても、プカプカ浮くどころか、元気に尾びれを振って海底に向かって泳いでいってしまう。
おそらくカラダの組織構造がほかのサカナと違い、水圧変化に耐えられるものになっているのだろう。だがこうして考えると実に不思議である。オニカサゴは、なんのために水圧変化に対する抵抗力を勝ち得たのだろう? 水深約150mの海底にじぃっと潜むこのサカナに、「神」はなぜこの耐水圧の機能を与えたのか? 考えれば考えるほど眠れなくなってしまいそうな話なのである。
(次回へつづく)
2008年1月15日(火) 豊田直之フォトエッセイ|固定リンク
2008年1月 8日(火)
十話 本物は誰だ? オニカサゴ
朝晩の冷え込みがきつくなればなるほど、夕飯には家族で鍋を囲みたくなる。この時期の鍋の具。それは船釣りをやっている人ならオニカサゴが筆頭に思い浮かぶのではないだろうか?
船釣りで言う「オニカサゴ」は、100~180mだちで釣る赤褐色の棘々したカサゴの仲間の総称だ。
実は、オニカサゴという正式名称のサカナがいる。これはどちらかというとサンゴ礁域の浅いところに棲んでいて、やはり背ビレに猛毒の毒腺を持っている。顔つきや体型も似ているが、サイズは30cmどまりぐらい。船釣りの「オニカサゴ」とは別種である。
では船釣りの「オニカサゴ」とはいったい何者なのだろうか? これまたこの仲間は魚類分類学上でも名称が定まらずぐらぐらとしていたのだが、イズカサゴ、フサカサゴ、コクチフサカサゴの3種を総称して船釣りでは「オニカサゴ」と呼んでいる。この中のイズカサゴを「本鬼(ほんおに)」と呼んでいるのだ。
さて種類のうんちくはここまでにして、問題の毒について話しておこう。今まで話したどの種にも背ビレに猛毒がある。刺されると、特に子供やお年よりは命を落とすこともあるという威力がある。もしも刺されたら、傷口を海水ですぐに洗い、可能ならやけどしない程度のできるだけ熱いお湯に患部をひたす。毒自体がタンパク質系のものなので、熱に当たると固まって毒の広がりを防げるという方法である。いずれにしても、刺されたら病院にいって医師の診察を受けるべきで、その場合は現地の病院のほうが対処法に詳しい場合が多い。
また、刺されないためには、バリバサミとガンガゼバサミを持って生きたい。バリバサミは、同じく毒を持つアイゴ(地方名バリ)をつかむためのもの。これでオニカサゴをはさんでつかむ。ガンガゼバサミはイシダイ釣りでガンガゼというウニの棘を切るためのもの。これでオニカサゴの背ビレを切る。尻ビレや腹ビレには毒はないようだが、棘そのものが鋭いので心配なら切っておいたほうがいいかもしれない。胸ビレは貴重なのでそのままそのまま。胸ビレの件はまた後日。
(次回へつづく)
2008年1月 8日(火) 豊田直之フォトエッセイ|固定リンク







